ぼーっとした子ども 本 [子ども]
ぼーっとした子ども
本
僕は帰国子女のハシリだ。
幼稚園の時に日本を離れて、小学校2年生の時に帰ってきた。
日本の小学校に転校して、成績はビリ中のビリだった。
なんたって、日本語の読み書きがまるでダメなのだ。
こんな状態だと、国語の成績だけじゃなくて、ぜーんぶダメ。
社会の教科書でも、算数の試験でも、全部日本語で書いてある。
「はなこさんはえんぴつをにほんもっていました・・・・・」
って問題を読んでるうちに試験時間が終わっちゃうのだ。
それでも、僕はノーテンキに学校生活をエンジョイしていた。
まあ、エンジョイしてたと言いきれるかというと、そうでもないけどね。
ガキなりに、カルチャーショックとの戦いとか、転校生の疎外感とか、
学校や友達と自分の折り合いをつけるのにけっこう忙しかった。
その間、僕の母は僕に対して成績がどうのということは、一切言わなかった。
でも、そうとう気をもんでいたらしい。
僕が3年生のある日、母は教育学の先生に相談に行った。
先生いわく「あなたのお子さんは、こと日本語能力に関する限り幼稚園児レベルです。」
がーん!
「そういう子には、むずかしい本を与えてお尻をたたくより、まず言葉に興味がわくようにしてあげなさい。」
ある日、母は僕をデパートの本売り場に連れていった。
「あなたのすきな本を何冊でも買ってあげるから、選びなさい。」
「買ってくれるならミニカーにしてよ。」
「だめ!」
親の心子知らず。
僕は10冊ぐらい選んだ。
母は僕の選んだ本を見て愕然とした。
ほとんど字がない本ばかりだ。
あってもおっきい字で1ページにほんの数行。
息子の国語能力の実体を、あからさまに見せつけられたのだ。
それでも、母は約束通り、それらの本を全部買ってくれた。
家に帰って、僕はその日のうちに全部読み切ってしまった。
母はまたまたびっくり。
息子が本を読んでいる姿なんて、ついぞ見たこともなかったのに、よよよよよ・・・・・。
これが僕の本との出会いだった。
僕もこの日のことは覚えている。
母がいきなり気前のいいことを言っておどろいたこと。
家に帰って、1冊目のページをなにげなくめくってみたら、そのまま夢中になっちゃったこと。
シートン動物記の絵が美しかったこと。
全部読み終わって、気がついたらまわりがうす暗かったこと。
その後もデパートに行くたびに、本だけは好きなだけ買ってくれた。
僕の読書は絵本系から童話系に移っていった。
僕は、小学校の卒業文集に「大人になったら童話作家になりたい」と書いた。
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ぼーっとした子ども ことばと思考 [子ども]
ぼーっとした子ども
ことばと思考
人間の思考には、ことばで表せるものとおんなじぐらい、
ことばで表せないものがあるんじゃないだろうか。
あるいは、こっちの方がずっと多いかもしれない。
あたまとこころをからっぽにして、じーっとしていると、
ことばにしばられるようになる前の、あの頃の感覚がよみがえってくる。
目を閉じて感じる春の日ざし。
セミの鳴き声のサラウンド効果。
母のにおい。
鼻血のにおい。
だっこしてもらった時のしゅわーっとした感じ。
アイスクリームに見えない雲のかたち。
叱られて、かなしいのに畳をむしって遊んじゃう感情。
大泣きしているときの、みょーな爽快感。
ひょっとして、僕たちは子ども達に早くことばを教えすぎているんじゃないだろうか。
ぼーっとした子ども 限度知らずのガキ探検
ぼーっとした子ども
4駅、5駅、6駅・・・・・限度知らずのガキ探検
3駅探検に大成功した僕ら。
分別知らずで限度知らずの僕らは、さらに先まで歩き始めたのだ。
トンネルの迷宮を抜けてしまえば、もう怖いものなんかないぞ。
ほら、もう4駅めについちゃった。
あっという間じゃん。
もっと行くぞ。
5駅目、6駅目.....
・・・・・とうとう7駅めまできちゃった。 ターミナル駅だ。
あたりはもうすっかり暗い。
ターミナル駅なだけに、にぎやかだ。
飲み屋街を通り抜ける。
ほろ酔いのおじさん達がうろうろしている。
来てはいけないところに迷い込んで、見てはいけないものを見てしまったような気がする。
駅の構内に着いた。
友だちとはここで別れなければならない。
別々の電車に乗って帰るのだ。
僕らはかたい握手をかわして、それぞれの家路についた。
電車に乗る。
足の裏が痛い。
頭の中はまっしろだ。
サイコーの達成感!
家に帰りついたのは7時すぎだった。
母は僕の顔をみるなり、
「ど、ど、どこへ行ってたのおおお!」
もう、こってんぱってんぽってんにしかられた。
「あと10分遅かったら、警察に捜索願い出すところだったわよおおおおお!」
その日以来、おんなじ電車に乗っても、景色がちょっとちがって見えるようになった。
車窓から見える街並みや道路が、ずっと実体感をもって見えるようになった。
自分自身も、ちょっとちがう自分になったような気がした。
前はふわふわと電車に乗っていた自分が、
今は自分の足と電車の車輪を感じながら乗ってるって感じに変わった。
確実に自分が変わったと思う。
あれから30数年が過ぎた。
僕はおとなになった。
父親になった。
でも、あの時の僕は、今の僕の中で息づいている。
百聞は一見にしかず。
そして、百見は一歩にしかずだ。
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ぼーっとした子ども 3駅探検
ぼーっとした子ども
3駅探検
3駅探検、いくぞ!
見当をつけた方にむかって、ズシズシと歩を進める。
突然風景が変わる。
大通りから住宅地に入っただけのことなんだけど、なんだか迷宮に入っていくようで、
背中がゾワーっとする。
だいぶん歩いた。
起伏のある道だ。
住宅地はまだ続いている。
不安がふくらむ。
見通しのきく高台に出た。
もうトンネルは終わってるはずだぞ。
線路はどこだ。
あった!
すんごく遠くにあった。
電車がロープぐらいの大きさに見える。
やっぱり角度がずれていたのだ。
ちんちんのまわりがオゾゾっとしてきた。
ど、どうしよう。
僕らは電車の方へ向かって、いちもくさんに走りだした。
でもすぐ疲れた。
疲れたら気持ちも落ち着いた。
線路は逃げやしない。
じっくり歩いていこう。
ゆっくり歩き出したら、どんどん楽しくなってきた。
僕らの間の会話はどんどん少なくなっていった。
話さなくても、探検仲間の心が通じ合うような気持ちになった。
とうとう3駅めについた。
やったぞ! ついにトンネルのそとの世界をこの目で見たんだ。
3駅探検成功だ。
足は痛いけど、なんてすがすがしい達成感だ。
そして、僕らは達成感と共に3駅めで電車に・・・・・乗らなかったのよね、これが。
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ぼーっとした子ども 禁じられたふた駅探検 What's good? [子ども]
禁じられたふた駅探検
What's good?
僕は毎日、電車の窓からふた駅探検コースを目で追っていた。
「禁じられた」探検コースがあそこにある。
なんだか、すごく遠いもののように思えた。
春が来た。
車窓から見る探検コースの様子が、ぱあっと変わった。
花吹雪だ!
探検コースは桜並木だったのだ。
もうがまんできないぞ。 探検再開だ!
僕らは探検を再開した。
ひさしぶりの探検コース。
わくわくする。
でも・・・・・すぐ飽きた。
ふた駅探検コースはすでに探検しつくしてあるので、もう「探検」じゃなくなっていたのだ。
じゃ、3駅探検いってみよー・・・・・って、そういうわけには行かないのだ。
ふた駅めと3駅めの間、電車は長いトンネルにもぐる。
僕らの探検ルートは、常に電車の線路を目印に開拓してきたのだ。
そうすれば迷子にならずにすむ。
でも、今度は目印がない。
どうしよう。
びびるなあ。
社会の授業で習った沿岸航海と遠洋航海のちがいみたいだな。
僕らはふた駅めのまわりを何度も何度もウロウロした。
電車がトンネルに入っていく角度と道路の方向を見くらべて、「あっちじゃないか」と見当をつけたり、
ちょっと歩いてやっぱりもどったりを繰り返した。
電車に乗って、そのトンネルの中を通るたびに、特別な気持ちがした。
トンネルのくらやみを見続けた。
そんなモジモジを繰り返したある日、とうとう好奇心が恐れにうち勝った。
3駅探検、いくぞ!
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ぼーっと ふた駅探検 What's good? [子ども]
ふた駅探検
What's good?
ひと駅探検にハマった小学生の僕。
わくわくの毎日。
でも、くりかえしているうちに飽きちゃうのよねー。
よっしゃあ、ふた駅探検に行くぞ。
数回びびってやめた後、決行した。
ひと駅めとふた駅めの間に、枝ぶりのすごくいい、のぼりやすい木を発見。
早速僕らの秘密基地にした。
秘密基地ができると、友だちと毎日のように立ち寄った。
「秘密」を自慢したくなって、さらにひとり、ふたりと誘って秘密基地に行った。
秘密基地は「秘密」でなくなった。
秘密基地ができたら、ふた駅探検はなんだか「探検」というより「定期航路」みたいになってきた。
ある日、僕らの秘密基地は別の同級生に見つかってしまった。
いつも乗る電車からまる見えだったのだ。
そいつはヒキョウにも先生にチクった。
僕らは先生にコッテリしぼられた。
「みちくさすなー!」
ちっ・・・・・ほとぼりがさめるまで探検は中止だ。
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ぼーっと ひと駅探検 What's good? [子ども]
ひと駅探検
What's good?
小学生のころの話。
僕は電車通学をしていた。
毎日まいにち、電車の窓からおんなじ風景を見ていた。
そうしているうちに、いろんな疑問がわいてきた。
この駅、ふるっちいけど、道から見たらどんなかっこうしてるのかな。
あの店、いったいなに屋さんなんだ?
あそこに公園が見えるぞ。 あのロケット型のグルグルすべり台に乗ってみたいな。
トンネルのあっちとこっちでは道路の感じがぜんぜんちがうぞ。
どんなふうにつながってるんだろう。
僕はもうがまんできなくなった。
下校時間に友だちをそそのかして探検を始めた。
最初はおっかなびっくり、ひと駅分歩いた。
「へー、この道ってこんなになってるんだあ。」
「あっ、電車が走って行くぞ。いつも乗ってる電車だ。遠くから見るとぜんぜんちがってみえる。」
街を歩いているおとな達が、外国人のように思えた。
ひと駅探検は、「どうなっているんだろう」の答え見つけと、
新しくみつけた不思議にあふれていた。
すべてが輝いていた。
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ぼーっとした子ども What's good? [子ども]
ぼーっとした子ども

僕が子どものころは、子どもはぼーっとしているものだった。
まちかどでぼーっと立ってる子。
ありの巣の前でぼーっとしゃがんでる子。
公園のぶらんこにぼーっとすわってる子。
僕もぼーが得意だった。
まちかどでぼーっとしていると、バスの音と、八百屋のかけ声と、赤ちゃんの泣き声が同時に耳に入ってきた。
ありの巣の前でぼーっとしていると、ありが出たり入ったり、ならんで歩いたり列からぬけたり、対面通行したりぐじゃぐじゃになったり
ぶらんこに座ってぼーっとしていると、雲が動いてるのかやっぱり動いてないのか
とても使いでのある毎日だった。
さらば ぼーの王国 What's good? [モルディブ]
モルディブを去る日がやってきた。
フロントで支払いを済ませ、フロントくんに挨拶をする。
ほわんとした笑顔を向けてくれる。
「またこいや」とは言わない。
こっちも「またくるよ」とは言わない。
またきたくないのかというと、そんなことはない。
身も心もぼーのキョーレツな洗礼を受けちゃった わ・た・し・なのだ。
かといって「またくるぞーっ」と心に誓うような気負いは
ぜーんぜん、ないのだ。
ぼーは人を突き放しも、抱き寄せもしない。
ただそこに、ぼーっとあるのだ。
ぼーの境地。
来たときと同じポンポン船に乗る。
ぽんぽんぽんぽんぽんぽん・・・・・
時間がとまったような、飛んでったような。
その間、島が見えた遠のいたイルカが飛んだ雲がわいたとびうおが飛んだお日さまが目に入った風がふいたのどがかわいたジャンボが見えた・・・・・空港島に着いた。
飛行機に乗りこんだ。
うわあ、まわりがぜんぶ人工物だ。
きもちわるい。
無機質な空間が僕をしめつけてくる。
空気まで人工的なにおいがする。
ぼーの王国を去るんだと実感した。
ジャンボが飛んだ。
さらば、ぼーの王国。
やっぱりまたくるぼ。
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モルディブ ぼーの英知 [モルディブ]
モルディブ ぼーの王国
ぼーの英知
モルディブは大変な英知の国である。
3500年ぐらい前から人が住んでいたらしい。
早くからインド、アラブ、アジアの国々と交易していたそうだ。
独自のモルディブ語を持っている。
書き言葉も12世紀頃からあるそうだ。
すごい!
有史以来、ごく一時期をのぞいてずっと独立国であり続けてきた。
決して強靱な国力や軍事力を擁していたとは言えないこの国が
列強のアジアへの進出のチャネルであるインド洋に位置していながら
独立を守り続けてこられたということは、
ほとんど奇跡だ。
ここから先は、ほんとかどうか知らないが、聞いたお話。
インドのサルタンが領土拡張をねらって、モルディブに攻めこんだ。
モルディブの王様は戦いを避け、隣の島に避難した。
インド勢は追撃してきた。
王様はそのまた隣の島に逃げた。
インド勢はまたまた追いかけて
王様はまたまた隣の島へ。
追いかけっこが延々続いた末、インド勢はほとほと疲れて帰って行ってしまった。
こうして流血を見ることなく、モルディブは侵略をまぬがれた。
何百年か経って、今度はアラブ勢が攻めてきた。
その時の王様も隣の島へ逃げた。
アラブ勢は追撃してきた。
王様はまた隣の島へ。
アラブ勢はまたまた追いかけて、王様はまたまたまた、アラブ勢もまたまたまたまた・・・・・。
ほとほと疲れて帰っていった。
モルディブは無血で平和を取り戻した。
なんという英知だろう!
山岡荘八先生の本で読んだ話を思い出す。
徳川家の剣術指南、柳生家の何代目かの当主のお話。
この人は、生涯ひとりの人も斬らなかった事をいちばんの誇りにしていたそうだ。
天下の柳生道場には、日本中から道場破りがやって来た。
柳生家当主は、師範代では手に負えないほど強い道場破りとの他流試合に応じなければならない。
逃げるわけには行かない。
ご当主はたんたんと道場破りの前にたたずむ。
道場破りがかかってくる。
木刀で受ける。
かかってくる。
体をかわす。
こちらからは、いっさい攻めない。
どんな重く強い打ち込みも受ける。
どんな切っ先鋭い技もかわす。
それがずーっと続く。
道場破りは息があがる。
するとご当主が聞く。
「終わりでござるか?」
なにくそ! またかかってくる。
受ける。
かわす。
道場破りは精根尽き果ててへたりこむ。
「終わりでござるか?」
返事がない。
「それは残念」と、当主は相手の小手に木刀でちょんと触れる。
相手が抵抗できないほど疲れているからといって、
面をとって相手のプライドを踏みにじるような事はしない。
すごい!
受け入れる。
受け流す。
自然に任せる。
無血。
平和。
これこそぼーの英知だ。
誰でもぼーを手に入れることはできる。
でも、ぼーの達人になるには、相手を見きわめるふかーい洞察と、
相手の力を「受ける」強靱さが必要なんだな。
ぼーの英知を手に入れるには、敵をも包みこむ、青空のような愛が必要なんだ。
まいりました!
モルディブ ぼーの囚人 [モルディブ]

ほんとかどうか、だれかに聞いたお話。
第二次大戦中、イギリス軍がこのあたりに進駐していた。
ある兵士(とーぜんイギリス人)が罪を犯して、軍法会議にかけられた。
判決は7年間の禁固刑。
しかし、この地域に刑務所はない。
困った。
そこでこの囚人、モルディブの無人島に連れて行かれた。
島が独房に早変わりというわけ。
7年たった。
ミリタリー・ポリスが船で迎えに行った。
「さあ、釈放してやるぞ。船に乗れ。」
囚人は「おねがい、連れて帰らないで!」と泣いて頼んだとさ。
モルディブ ぼーの圧倒 [モルディブ]
ぼーの圧倒

仕事であちこち回ったあと、1日休日を取ることにした。
ウィンド・サーフィンを借りた。
島の浅瀬から出て、ボードを沖へ向ける。
すなおな風にのって、ボードは海の上をすべって行く。
静かだ。
少し行くと、海の色が急に変わる。
すいこまれそうな濃紺だ。
いきなり海が深くなっているのだ。
モルディブでは、島のまわりにちょっと浅瀬があって、いきなりどーんと崖のように海が深くなる。
潜ってみるとわかるが、深い海に塔が立っていて、その頂上がちょこっと海からはみ出て島になっているという感じだ。
どういう自然の奇跡なのか、珊瑚が何百万年もかけて堆積した結果なのだそうだ。 (注)
風が快調に僕とボードを運んでくれる。
ヌサドゥアの島が後ろに小さく見える。
ズサッ!
突然、神の手にさえぎられたようにボードが止まった。
僕はいきおいあまってひっくり返った。
「な、なんだ?」
なんとそこは島になりかけの砂州だった。
直径10メートルぐらいの砂州が、漆黒の海のまん中にぼーっと白く浮き上がっている。
砂州は水面ぎりぎりの深さで、島になる直前の状態だ。
砂州に立つ。
海はくるぶしに届かないぐらいの深さだ。
あおーい360度の空。
あおーい360度の海。
足もともぜーんぶ海。
まるで宇宙空間に「立っている」ような感じだ。
あおむけにねっころがってみた。
海水が後頭部をひたすが、耳まで届くか届かないかの浅さだ。
体が上から下へさあーっと洗われる。
体中の感覚がぞわーっとなる。
海流だ!
水深わずか数センチの海流だ。
しずかだが、ゆるぎない力の海流だ。
海流が僕の頭から思考そのものを、ぞわあーっと、吸い取って持っていってしまった。
「ゆるぎない」ぼーが僕を支配した。
僕は海パンをぬぎすてた。
なんでイキナリ?てなもんだが、人間はここまで圧倒されると、
もうあとはパンツ脱ぐぐらいしかする事は残ってないのよ。
僕は全裸で再びあおむけになり、圧倒的なぼーに自分をゆだねた。
目はおどろきとともに大きく見開かれているのに、なにも見ていない。
体を力強くつたう海流はシャワーのように冷たいのに、体全体はほわあっとあったかい。
ゆだね感!
「圧倒的な」とか「ゆるぎない」ぼーなんて、初めてだ。
おそるべし、ぼーの王国!
注:
島の形成については、他に火山沈降説など、いくつかの説があるそうです。
また珊瑚の堆積によって、形成されつつある島が数多くあるそうです。
モルディブ ぼーの王国 ぼーの島探検 [モルディブ]

ぼーの島探検
もうひとつ、出張の目的があった。
例のシンガポール資本がホテルにする島候補がいくつかあって、
それらを見て回るというものだった。
モルディブのホテルはみんな、島ひとつが一軒のホテルになっている。
そこの従業員は、近所の島々から舟で通勤してくる。
夜になれば、さっさとじぶんちの島に帰る。
みごとな職住分離だ。
これで観光産業の振興をして、雇用を創出しながらも、
国民の生活はインゴーな日米欧の悪しき文明に毒されずに済むというわけだ。
ぼーの英知。
今日もフロントくんの友達くんの運転するスピード・ボートに乗ってクルーズだ。
フロントくんの友達くんじゃめんどくさいからフロトモくんとする。
5つ程の候補島を見て回る予定だ。
じゃフロトモくん、やってちょうだい。
あれ?
今思い出そうとしても、5つの島をどうやって見つけて、たどり着いたのか思い出せない。
僕らは島の名前を聞かされてきただけだったし、海図とかの手がかりも一切持ってなかった。
どれも廃業して久しいリゾート島か無人島だ。
ツーリスト・ガイドなどの資料に載っているはずもない。
「おまえらポッと出ジャパニーズが聞きかじってきた島の名前なんざ、こちとら先刻承知のすけでい」
って啖呵でも切ってくれれば
「へへー、親分さん何とぞよしなに」とおまかせしたんだろうけど、
フロトモくん、知ってるでなし知らないでなし、気がついたら目的の島に着いていたという、
超絶時空間ぼー・ワープ技を目の前にくりひろげてくれたのだった。
最初の島に着いた。
こういういきさつから行けば、「おーやったあ、ついたぜぇ」となるのが普通なのだが、
ご承知の通りそうはならないのよね。
「ついたの? ここ? あぁ そう」と、藤山寛美状態。
廃業久しい「朽ち果てリゾート・アイランド」だ。
ラグーンがある。
椰子の木がある。
そして窓を海岸に向けて並ぶ長屋のようなホテルの廃屋がある。
しかし、ここには廃屋につきもののウラブレ感がまーったくない。
蜘蛛がいないから蜘蛛の巣もはってない。
ねずみもいない。
ゴキブリもいない。
ただ珊瑚を固めた壁材と梁や柱の木材が「まあね」ってかんじで崩れているだけだ。
「陽気な廃墟」ってあるんだなあ。
しかも自己主張ゼロって感じ。
ただぼーっとそこにある。
ぼーの王国では「興る」も「廃れる」も明暗が分かれてないで、どっちもただそこに「在る」んだな。
じゃ、次へいこうか。
フロトモくんのボートに乗って次の島にワープする。
また無人島だ。
白い砂浜、椰子の木、クリア・ウォーター、たくさんのさかな。
うつくしい。
また次の島にワープする。 美しい。
またワープする。 美しい。
またワプ・・・ 美し・・・
またワ・・・・・・・・・・ 美・・・・・・・・・・
ヌサ・ドゥアの宿に戻った。
さあ、リゾート候補島についてレポートを書こう。
あれ?
どれがどれだっけ?
わかんなくなっちゃった。
ま、いいっかあ。
「結論:どれでもええ。」
モルディブ ぼーの王国 船会社でぼー [モルディブ]

船会社でぼー
我々はまたふりだし地点に立っていた。
運輸省でもらった住所はこの辺だ。
また 道行く人に尋ねる。
「んーと、 あっち。」
なんと、 指は上を指してるではないか。
いかにぼーの神の洗礼を受けた僕らでも、 空は飛べんですたい。
そうではなく、 目の前の建物の2階だと教えてくれたのだった。
「ありがとう。」
階段をのぼる。
ドアをノックする。
男がドアを開ける。
初めてみる異人種二人組の突然の訪問を受けて、 当惑している様子。
実はこっちも当惑している。
その事務所は6畳ぐらいしかなくて、 机ひとつ。
いるのはドアを開けてくれた男ひとりだけ。
大運輸省様が1社だけ紹介してくれた大船会社がこれか?
「ここはモルモル海運ですか?」
「そうです。」
「運輸省に教えてもらって来ました。 船をチャーターしたいんです。
おたくはどんな船を持っていますか。」
男は「あれです」と、 窓の外の岸壁を指さした。
ただのモーターボートだ。
「もっと大きいのないの?」
「あります。 それです。」
ただのモーターボートのちょっと大きいやつだ。
「他には?」
「これでぜんぶ。」
あちゃー。
「さっき歩いてたら上陸用舟艇があったのを見たんだけど、 あれはおたくのじゃないの?」
「ちがう。」
「どこの会社のか知ってる?」
「知ってる。」
「ひょっとして、 おしえてくれる?」
「いいよ。」
男は紙に「ジブジブ海運」という社名と、 住所まで書いてくれた。
自慢げに僕らに渡してくれる。
やったあ。
「どうもありがとう。 さようなら。」
去ろうとすると、 男は急に悲しげな目になった。
ころがりこんできたお客をコンペティターに渡してしまった事に、 初めて気が付いたようだ。
「またきてくれるか?」
バンビのような目だ。
「う... うん。 うん! またくるよ。」
いい人だなあ。
(つづく)
注:この話は約20年前の私の体験と当時の資料に基づいて書いています。
現在のモルディブの実体と異なる点もあると思いますが、ご容赦下さい。
モルディブ ぼーの王国 3 [モルディブ]
モルディブ ぼーの王国 3

運輸省にて
運輸省は3階だ。
階段で上る。
着いた。
ドアの前で海パンの上から長ズボンをはく。
ドアをノックして、運輸省にはいる。
20人ぐらいの人がデスクを並べて働いている。
これで運輸省ぜんぶ。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
全員がこっちを向いて後頭部後方85センチ視線を送っている。
この瞬間、我々二人は一国の省庁の機能を完全に停止させたわけだ。
女の人がカウンターに歩み寄ってきてくれた。
「何かご用ですか。」
「かくかくしかじかで、上陸用舟艇をチャーターさせてくれる海運業者を探しているのです。
紹介してくれませんか。」
「わかりました。紹介できます。」
「ありがとう。」
・・・・・・・・・・ ほほえみのまま沈黙。
「・・・・・で?」
「依頼内容を書類で提出してください。」
んなにい?!
書類だとお?
俺たちゃ会社のレターヘッド(便箋)も社判も持ってきちゃいねえんだ。
タイプライターもなきゃ書類打てねえじゃねえか。
だいたい、書類で事が済むんならシンガポールの領事館でそういやあいいじゃねえかよう!
そうすりゃこんな地の果てまで飛んできやしねえのに、
えぇえ?
聞いとんのかこらあ!
・・・・・とはならないのよ、これが。
ぼーの洗礼を受けた僕らは、怒り・困惑・あせりなどという感情を
すでに大気中にほわぁっと蒸発させちゃったのだ。
「・・・・・ああぁ、そうですかあ、書類ねえ。」
「そう、書類です。」
「あのう、会社のレターヘッド持ってきてないんですけど、無地の紙でもいいですか。」
「結構です。」
「社判もないんですけど。」
「構いません。」
「ひょっとして、手書きってわけにいきますか?」
「いいですよ。」
「よかったあ。それなら提出できます。 ・・・・・あのう、紙とえんぴつ貸してもらえますか。」
「はい、どうぞ。」
よかったあ。
我々はその場で、汗をふきふき依頼書類を書き始めた。
女性職員はその間ずっとカウンターで立って待っていてくれる。
なんてやさしいんだ。
目の前に立たれても例の視線なので、プレッシャーはぜーんぜんない。
ゆっくりと書類書きをさせてくれる。
「できました。」
女性職員はきたない手書きの依頼書を受け取ってくれた。
奥の方へ行き、数人の人と相談している。
やがて、小さなメモを持ってカウンターに戻ってきた。
メモを渡してくれる。
そのメモには手書きで、会社の名前と住所が記されていた。
「ふうん、モルモル海運ねえ。この会社は大きい会社ですか。」
「そうです。」
「他にも何社か紹介してくれませんか。」
「それでは、依頼の書類を・・・」
「あ、いやいや結構です。ここに当たってみます。どうもありがとう。」
汗ふきふきの書類書きはもういやじゃ。
「お世話さまでした。さようなら。」
我々はオフィスを後にし、ドアの前で長ズボンをぬいだ。
こうしてモルディブ運輸省は平穏な日常業務に戻って行った。
(つづく)
注:この話は約20年前の私の体験と当時の資料に基づいて書いています。
現在のモルディブの実体と異なる点もあると思いますが、ご容赦下さい。
モルディブ ぼーの王国 2 [モルディブ]
モルディブ ぼーの王国 2

運輸省に行く
翌朝、目が覚めた。
ここはどこ?わたしはだれ?みたいな目覚め。
朝めしを食いながら相談。
どうやってマーレに行こうか。
スピードボートがチャーターできた。
マーレまで30分ぐらいで行けるそうだ。
我々の出張目的は、
モルディブで持ち上がっているシンガポール資本のホテル建設計画に食い込もうとしていて、
その下調べにきたというわけ。
仕事のひとつは運送手段の調査。
ホテル建設用の部材や家具を島に陸揚げするにも、
珊瑚礁に囲まれているので、普通の船は使えない。
戦争映画に出てくる上陸用舟艇のような船が必要なので、
そんなもんが現地で調達できるのか調べる必要がある。
シンガポールのモルディブ領事館に聞いたら、マーレの運輸省で問い合わせろと言う。
それで、わざわざやってきたというわけ。
さあ出発だ。
フロントくんの友達が運転するスピードボートに乗って、まーっさおな海をすすむ。
ぼー・・・
至福の30分間。
先輩と僕はほとんど口をきかない。
たまに目があってぼーっとほほえみを交わすのみ。
マーレに着いた。
さすが首都。
2階建ての建物が軒を連ねている。
人々も行き交っている。
車は走っていない。
さて、運輸省が入ってる政府庁舎をさがさなくっちゃ。
道行く人に尋ねた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「政府庁舎はどっちですか。」
沈黙・・・・・
夕べのフロントくんとおんなじだ。
まったく緊張感がない。
目の焦点はやっぱり僕の後頭部後方85センチにある。
「んーと、あっち。」
「どうもありがとう。」
ちょっと歩く。また訊く。
「んーと、あっち。」
「どうもありがとう。」
道すがら、3人に聞いた。
島のはずれの岸壁に着いちゃった。
ぜーんぜんイカリがこみ上げない。
ふりだしに戻る。
また訊く。
「んーと、あっち。」
今度は最初の人と反対の方角を指す。
「ありがとう。」
ぜーんぜん疑わずにそっちへ歩く。
5階建てぐらいのビルがあった。
明らかに他の建物とは違うたたずまいだ。
入り口の看板を見る。英語も書いてある。
合同庁舎だ。
たどり着いてよかった。
(つづく)
*注:
この話は約20年前の私の体験と当時の資料に基づいて書いています。
現在のモルディブの実体と異なる点も多々あると思いますが、ご容赦下さい。
モルディブ ぼーの王国 [モルディブ]
モルディブ ぼーの王国

ぼーの神の洗礼
仕事でモルディブに行った。
先輩と二人での出張だ。
行く前にホテルを予約した。
政府庁舎に用事があったので、首都のマーレの宿をリクエストしておいた。
飛行機が空港に着いた。
タラップを降りた。
ん?
あいやー
なにもない。
滑走路だけの島だ。
航空母艦のデッキだけをペタンと海に浮かべたような島だ。
滑走路島のはじっこに桟橋があった。
そこのお兄さんが手まねきしている。
船に乗れという。
「この船はマーレ(首都の島)に行くのか?ヴィアドゥーというホテルに泊まるんだ。」
「ヤーヤー、乗れ乗れ。」
これが、ぼー王国の洗礼の始まりだったのだ。
船は滑走路島の正面にある一番大きな島に向かう。
首都島のマーレに違いない。
ぽんぽんぽん ぽんぽんぽん
聞くところによると、モルディブは1,200もの島からなる国で、
どの島も外周が歩いて5分ぐらいの小島ばかり。
一番大きな首都の島マーレでも徒歩30分ぐらいで一周できちゃうそうだ。
マーレ島のまわりを防波堤の様に珊瑚礁が囲んでいる。
その一部が切り開かれ、舟が出入りできるようになっている。
さあ、港に入るぞ。
あや?
舟は左に曲がってしまった。
珊瑚礁の外周にそって進んでいく。
別の水路から港にはいるのかな。
ぽんぽんぽんぽん ぽんぽんぽん
しかし、こういう小舟にゆられて宿へ向かうなんざ、風情があっていいねえ。
あおーい空 しろーい雲 ひろーい海。
波がほとんどなくて、ぺったんこの海。
ぼー
・・・・・・・・・・ ん?
マーレはどこ?
あっ!
なんと、まうしろにあるぞ。
舟の正面には別の小島があって、そこに向かっている。
「おい船長、後ろに見えるあの島はマーレか?」
「ヤー」
「俺たちはマーレに行くんだ。さっき確認しただろう。引き返してくれ。」
「あー」
船長は、たった今我々と会話したことはなかったかのように、正面を向いて舵を握っている。
まなじりを決して我々を無視しているようでもない。
目の焦点がわりと定まっていない。
なにごともなかったかのように運転席にたたずんでいる。
おれ、今船長に文句を言ったよな。
こたえが帰ってこないよな。
問題解決してないよな。
・・・・・まいっか。となりの島でこの舟降りて、別の舟で引き返そう。
ぽんぽん ぽんぽん ぽんぽん
となりの島に近づいた。
やっぱり珊瑚礁に囲まれている。
モルディブという国は、巨大な珊瑚礁が20ぐらいあって、
それらの内縁に島が点在しているそうだ。
巨大珊瑚礁はアトールと呼ばれ、南北に長く並んでいる。
我々の舟はアトールの内側を航行している。
だから海は波もなく、ぺったんこだ。
こうしてみると、それぞれの島はアトールの内側にあって、
さらに土星の輪の様に自分自身の珊瑚礁に囲まれている。
どの島も海抜は数フィートしかない。
島はアトールと自分の珊瑚礁と、二重に波から守られている。
こうして守られていないと島は波に沈んでしまうだろう。
だいたい島自体が珊瑚が堆積してできたそうだ。 (注1)
島の珊瑚礁に近づいた。珊瑚礁の切れ目、つまり舟の進入路が左の方に見えた。
舟は左に曲がった。珊瑚礁沿いに時計回りに進む。
よしよし、港にはいってちょ。
あああ?
切れ目を通り過ぎちゃった。
「せ、せんちょおおお! あの島に止まるんじゃないのか!」
「あー」
「この舟はいったいどこへ向かってるんだああ ぁ ぁ ぁ ・ ・ ・ 」
普通だったら詰め寄る場面なのに、どういうわけか語尾がおそらに散ってしまうわたし。
本来ならイラつくか、心配にさいなまれるシチュエーションなのに、
感情の固まりがタンポポの綿毛のようにほわぁ~・・・と拡散して行く。
そのぶん、もわぁ~とお脳と体を包んでくる至福感。
先輩とおれはふなっぺりの定位置に戻って、ペタンと座った。
「どうしようかぁ・・・」
「んんん ・・・・・ そうだなあ」
あ、いるかがジャンプした。
あっちはトビウオだ。
もーこれできまり。
ぼーの神が遣わされた、ぼーのへそ。
ぼー・・・ ・ ・ ・
ぽんぽんぽんぽんぽん・・・ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん
あー、次の島も通りすぎてしまった。
ぼー
あれから舟は、近づいた島の周りを半周し、弧を描いては次の島に向かい、弧を描いては次に向かい、弧を描いては次に向かい、弧を・・・・・
2時間ほどもたっただろうか。
マーレなんてとーっくのむかしに水平線の彼方に見えなくなっている。
夕日が海にしずむ。
きれいだなー。
舟が島に着いた。
もう暗い。
宿がある。
ヴィアドゥーと書いてある。
なぁーんだ。
ヴィアドゥーはマーレにはないんだあ。
そっかー。
マーレの宿をリクエストしたはずなのに、モルディブ側のエージェントがここを取ってしまっていたのだ。
インターナショナル・ビジネスマンとしては、ちゃぶ台ひっくり返してオトシマエをせまるところだが、
そこはぼーのとりこのわたしたち。
なぞなぞの答えを教えてもらった子どものようにハッピーになっちゃった。
るんるん。
フロントに着いた。「予約してるコブチザワとぱぱ太だけど。」
「ヤー」
フロントくん、ノートを見る。
「そんな名前の予約はない。」
ぁああ?
「いやいや、そんなはずはない。 もう一回調べてごらん。」
(にこにこと) 「ヤー」
・・・・・
「やっぱりない。 おやすみ。」
「ちょ、ちょっとまって。 ぼくらはどうしたらいいの?」
「わかった。となりの島に無線で話してみる。 同じ系列のホテルだ。」
フロントくんはモルディブ語で無線マイクに話しかけている。
なんだか楽しそうだ。
連絡をとりあっているというより、おしゃべりしてるみたいだ。
ずいぶん長ばなし・・・・・
無線を切った。
「お二人の名前はとなりのホテルにある。 そこへ行ってくれ。」
あーよかった。
「ありがとう。」
またさっきの舟に乗り込んだ。
ぽんぽんぽん
着いた。
ヌサドゥアという名前だ。
フロントに行った。
「コブチザワとぱぱ太だけど」
「そんな名前は知らない。」
あああ?
ぜんぜんイカらない。
「さっきおとなりの島から無線が入らなかった?」
「入った。」
「僕たちを泊めるようにっていう連絡だったはずだけど、聞いてる?」
沈黙。
フロントくんと僕は正面から向き合っているのだけど、
彼の目はどう見ても僕に焦点があってない。
僕の後頭部後方85センチぐらいのところに焦点をむすんでる感じだ。
そのせいか、正対の沈黙なのに、緊張感がまったくない。
フロントくんが小声で沈黙をやぶった。
「・・・・・あしたまで考えとく。」
「んんん、でもね、今夜泊まるところがないと困っちゃうんだ。
僕らの名前で予約は入ってないんだね。」
「入ってない。」
「あいてる部屋はないんだね。」
「ある。」
あああああ?
「その部屋はとまれないの?」
「とまれる。」
「あ・・・・・・そう。じゃ、僕たちとめてくれる?」
「いいよ。」
ぜーんぜんイカリがこみあげない。
(つづく)
注:
この話は約20年前の私の体験と当時の資料に基づいて書いています。
現在のモルディブの実体と異なる点も多々あると思いますが、ご容赦下さい。
注1:
他に火山沈降説など、島の形成にはいくつかの説があるそうです。
シュールごみひろいのまねっこ [ボーっとする]
シュールごみひろいのまねっこ

Fさんに触発されて、僕は友だち数人と「ごみひろい体験ツアー」を企画した。
宿に一泊して、夜はドンチャンさわぎ、
翌朝は海岸でごみひろいという内容。
なんでごみひろいするのに、
ワザワザ一泊して宴会までせにゃならんのだ。
「おおげさにする」
「パックにする」
「宴会で付加価値をつける」
なんていう手法におちいっちゃう僕たちって、ホントに病める都会人。
ま、それはそうとして、
翌朝、僕らは千葉の海岸でごみひろいを開始した。
これが、ハマるのなんのって、
ハマるのよ。
トングとゴミ袋を持ってまわりを見わたす。
最初はただの風景だ。
ふとゴミが目に止まる。
ひろう。
ゴミ袋にいれる。
「おれって何やってんだかなあ」
という思いが頭をよぎる。
・・・と、次のゴミが目に飛び込んでくる。
ひろう。
袋に入れる。
あ、またあった、ひろう、いれる。
またあった、ひろう、いれる、また、ひろう、いれる、また、ひろ、いれ、またひろいれ、またひろいれまたひろいれまたひろいれまたひろいれま・・・・・
もう一心不乱。
ふと見ると、Aくんがゴミひろいをしている。
ハマっているというより、たんたんと手順をこなすという感じだ。
タバコに火をつけた。
うまそうに吸ってる。
でもゴミひろいの手は休めない。
あいつなりにハマってるのね。
ああっ!
ポイ捨てしやがった!
でもゴミひろいの手は休めない。
2本目に火をつけた。
あああっ!
またポイ捨てしやがった。
でもゴミひろいの手は休めない。
ポイ捨てゴミひろい。
シュールだわ。
シュールごみひろい [ボーっとする]
シュールごみひろい

ある外資系の社長、Fさんの話。
Fさんは湘南の海岸近くに住んでいるんだけど、
突然思い立って海岸でごみひろいを始めた。
これがメチャクチャ気持ちいいんだって。
「善行を積む」とか「奉仕する」とか、そういう頭でっかちなことじゃなくて、
とにかく爽快なんだそうな。
Fさん、すっかりハマっちゃって、こんどは家族4人で連れ立ってごみひろいに行った。
そうしたら、ふしぎな現象が起きた。
その様子をみた近所の人たちが、さんさんごご集まってきて、ごみひろいを始めちゃった。
みんな会話を交わすでなく交わさないでなく、ごみひろいを続けた。
そして、会話を交わすでなく交わさないでなく、流れ解散。
すごい!
山下洋輔さんの本にこんなことが書いてあった。
ヨーロッパでは、どんな小さな町にもコンサート・ホールがあって、町のオーケストラがある。
たいていはズタボロにヘタクソなオーケストラなんだけど、町の人たちは辛抱強くコンサートにかよい続ける。
しかし何千回かにいちど、ズタボロ・オーケストラはものすごい演奏をする。
神が降臨したかのような、夢のような演奏をする。
そんな時は、演奏が終わったあとも拍手なんか起こらない。
演奏者も観客もほほえみを浮かべたまま、静かに家に帰るんだそうだ。
集団ハマリ。
シュールだねえ。
江戸橋のおっちゃん
江戸橋のおっちゃん

本格的な雨ふりの日だった。
僕は傘をななめ前にかしげて歩いていた。
江戸橋という橋のそばの交差点にさしかかった。
都会の無味乾燥を代表するようなところだ。
大通りを車がひっきりなしに走っていく。
人通りはまばらだ。
橋の上を首都高速道路がまたがっており、そこからも轟音がとだえない。
あれ?
交差点の角になにかが立っている。
なにかじゃないぞ、ひとだ。
ホームレスのおっちゃんだ。
ズタボロのかっこうをして、頭から毛布をかぶっている。
ずぶぬれだ。
まわりには雨つゆをふせげる場所もあるのに、
このおっちゃんはなぜわざわざ雨の中につっ立っているんだろう。
まんじりともしない。
人なのかモノなのか、わからない感じで立っている。
僕はなにか普通でないものを感じて、声をかけてしまった。
「おっちゃん、そんなところでなにしとるん?」
関西弁になってしまった。
関西人でもないのに、なんで関西弁なんだ?
「これでも飲んで、元気だしい。」
僕はペットボトルのお茶を差し出した。
おっちゃんは数秒かけてモノから人にもどって、動きだした。
頭をもたげた。
僕の差し出しているペットボトルに目をとめてから
そのまま視線を上にあげて、僕の顔を見た。
視線が上がるにつれ、表情もモノっぽい無表情から
血がかよう人間の表情に変わっていくようだった。
すこしおどろいている。
「ほら、おいしいで。」
また関西弁。
おっちゃんは、いよいよ驚愕の表情をあらわにしている。
僕はなんだかほっとした。
おどろいたり、けげんに思ったりしてくれる方が、
モノみたいに固まってるよりずっといい。
僕がさっき異様さを感じたのはこれだったんだ。
人間なのにモノみたいになっちゃって、普通でないオーラを発してる。
いや、オーラを発してるんじゃない。
人なのにオーラを発してなかったんだ。
ガランドウ状態だったんだ。
信号が青に変わった。僕は歩きだした。
「じゃあな、元気だしいや。」
まだ関西弁。
横断歩道を3分の2ほどわたったところで、振り返ってみた。
おっちゃんは80度ぐらいの角度でペットボトルのお茶をラッパのみしている。
意外に豪快な飲みっぷりだ。
よかった。
ガランドウは、あきまへん。
縁側でぼー
縁側でぼー

夏の縁側。
蚊とり線香。
風鈴の音。
ぼーがやってくる。
冬の縁側。
小春日和。
肩にお日さまがあたたかい。
親子でならんですわる。
日光がまぶしい。
ぼーがやってくる。
ぼーの境地
ぼーの境地

高校時代の国語の教科書で読んだ話。
むかし、中国に武芸好きの王様がいた。
特に弓矢が好きだった。
ある日王様は、国一番の弓矢名人を呼んで言った。
「そちに7年間の修行期間を与える。
さらに腕を磨いてワシをうならせるような大名人になって戻って参れ。」
「ははー。」
名人は山にこもって修行を始めた。
7年がたった。
名人は戻ってこない。
王様は捜索隊を山へ向かわせた。
名人が見つかった。
髪も髭も伸び放題、衣服はやぶれ、ぼろぼろの状態だ。
王様の前へ引き立てられた。
「さあ名人よ、修行の成果を見せてくれ。ワシをあっと言わせてくれ。」
名人は答えない。身動きもしない。
「弓矢を持てい!」
名人の前に弓矢を置いた。
名人は静かなまなざしで弓矢を見るだけで、さわろうともしない。
王様は家来に命じて名人を立たせ、弓矢を持たせた。
名人は言った。
「これは・・・・・なにをするものですか。」
「なにい?」
王様はかあぁっと名人を凝視する。
家来どもはみんな、目を下に向けてかたまる。
異常な緊張感がみなぎる。
その緊張のウズの真ん中に名人がぼーっと立ってる。
「え・ぇぇぇ・えらい!」
王様が叫んだ。
「そこまでの境地に達したか!」
王様は玉座を離れ、名人に歩み寄った。
目には涙が光っている。
名人から弓矢を取り、地面に放り投げる。
両手をとって玉座の隣まで連れて行き、鄭重に座らせた。
「弓矢を忘れるまで弓矢の修行をするとは、至高の境地じゃ!」
王様は名人に家を与え、一生手厚く処遇したそうな。
・・・・・なんのこっちゃ。
ブラジルのわびさび [ブラジル]
ブラジルのわびさび

ブラジル人の友だちに聞いた話。
世界中の言語の中で、「わびさび」と同じ意味を持つ言葉が
ブラジルのポルトガル語だけに存在するそうだ。
うかつにもなんという言葉なのか忘れてしまった。
仮に「ブラさび」とする。
ブラジル人はブラさびを感じる。
ただし、彼らがブラさびを感じる対象は、日本のわびさびとは大違い。
ギラギラの太陽
荒野に横たわる牛の頭蓋骨
ガラスの破片
血
・・・・・などにブラさびは宿るそうだ。
ちょっと待ってくれ。
それってほんとにわびさびと同義語か?
わびさびってのは、山奥の庵とか、銀砂のような薄雲に半身を隠す月とかを見て感じる
さびしいとか無常だとかいう心の有り様のことだぞ。
友だちはまったくその通りだと言う。
わびさび同様、そこに静かに漂う静寂感と寂寥感を表現しているそうだ。
う~む。
チベットの僧院
チベットの僧院

学生時代に世界を放浪した友だちがいる。 そいつの話。
彼はチベットの山奥の僧院を訪ねた。
そこの修行僧が彼に尋ねた。
「お前は何をしているんだ?」
「世界を旅しています。」
「なぜ?」
「世界のことを知りたいから。」
「・・・・・ふーん、目でみて回りゃ楽だからな。」
「え、どういうことです?」
「私はこの山奥にいて、座禅をくんでれば世界が見えるよ。」
ほぇぇぇえええ。
ぼーは意外に敏感
ぼーは意外に敏感

あなたがぼーっとしているとき、実はあなたの感覚は鋭敏になっている。
360度の五感が同時にはたらく。
肌にふれる空気のゆらぎを感じる。
遠くで鳴いている鳥の居場所がなんとなくわかる。
静寂に継続音を感じる。
大気と大地のあいだの自分を感じる。
六本木から渋谷まで [ボーっとする]
六本木から渋谷まで

少しつよい雨がふっていた。
僕は六本木から西麻布の交差点にむかって歩いていた。
ずうっと長い下り坂だ。
坂の途中で赤信号につかまった。
友だちとの待ち合わせ時間にはまだ余裕がある。
まあ、ゆっくり歩いていこう。
「あのう、すいません。」
僕のとなりに初老の男性が立っていた。
「渋谷へ行くには、こっちの方向でいいんでしょうか。」
傘を持っていない。
「たしかにこっちの方だけど、ちょっと遠いですよ。 雨もふってるし。」
僕は自分のビニール傘をさしかけてあげた。
「うしろの方へ行くと地下鉄の駅ですから、それに乗っていったほうがいいですよ。」
男性は傘のふちにてのひらをあて、僕の方にそっと押しもどしつつ、
「いやあ、いいんです。歩いていきますから。」
「でも、傘も持っておられないのに。 渋谷まではけっこうありますよ。」
「いやあ、私、地下鉄に乗るお金持ってないんですよ。 ホームレスなもんでねえ。」
男性はにっこりとほほえんだ。
言われてみれば、男性は着古したような服をまとっている。
でも、それなりに服装に気を使っているんだろう。こぎれいな身なりをしている。
こぎれいなホームレスっていうのもヘンだけど・・・。
「時間はたっぷりあるから、歩いて行きますわ。」
「そうですか。じゃあ、僕はそこの坂の下で屋内に入りますから、この傘を持っていきませんか。」
「いやいや、大丈夫。濡れていきますわ。 もう濡れちゃってるし。 どうもありがとう。」
おじさんは、僕にむかって深々とおじぎをしてから、歩いていった。
飄々と。
ユソフとミスター・ジョーンズ
ユソフとミスター・ジョーンズ

この話、どっかで聞いた事あるでしょ?
南の国の昼さがり。
ユソフがヤシの木陰でぼーっとしている。
そこへ通りかかったミスター・ジョーンズ。
「こりゃユソフ、おまえはなんでいつもそうやってぼーっとしてばかりいるのだ。 働け。」
「ミスター・ジョーンズ、働くとなんかいいことがあるんですかい?」
「カネが稼げる。」
「ふーん、カネを稼ぐとなんかいいことがあるんですかい?」
「豊かになっていろんなものが買える。わしの服を見ろ。靴もいいじゃろう。」
「でもこんな暑い所でそんな窮屈なもん履いてられませんや。 あんたそのせいで水虫でしょ。」
「そ、それだけじゃないぞ。 もっと働くと商売が大きくなって人を雇えるようになる。」
「人を雇う?」
「そうだ。それが経営というもんだ。 そうすれば自分は指示だけして、働くのは人にやってもらうことができる。 自分はビーチでぼーっとしていられる。」
「おいら、今そうしてまさあ。」
ぼーの循環。
ぼーっとした子ども
ぼーっとした子ども

僕が子どものころは、子どもはぼーっとしているものだった。
まちかどでぼーっと立ってる子。
ありの巣の前でぼーっとしゃがんでる子。
公園のぶらんこにぼーっとすわってる子。
僕もぼーが得意だった。
まちかどでぼーっとしていると、バスの音と、八百屋のかけ声と、
赤ちゃんの泣き声が同時に耳に入ってきた。
ありの巣の前でぼーっとしていると、ありが出たり入ったり、
ならんで歩いたり列からぬけたり、
対面通行したりぐじゃぐじゃになったり
ぶらんこに座ってぼーっとしていると、
雲が動いてるのかやっぱり動いてないのか
とても使いでのある毎日だった。
シンバルみがき
シンバルみがき

学生時代の話。
僕は下手くそなドラマーだった。
毎日練習に明け暮れていた。
ある日、「シンバルをみがこう」と思いたった。
校舎の脇に日当たりのいい場所をみつけて、シンバルをみがいた。
ときどき手を休めて、ぼー・・・・・
教室にむかって急ぐ学生の群れが、大河のように僕の脇を流れていく。
女の子がひとり、群れからすーっと離れて、不思議そうにぼくの方へ近寄ってきた。
「ねえ、なにしてんの?」
「シンバルみがいてんの。」
「ふーん・・・」
ごし ごし ごし ごし ごし
沈黙。
始業ベル。
「あっ・・・・・まいっか。 ねえ、私も横にいていい?」
「いいよお。」
ごし ごし
沈黙。
終業ベル。
「あっっ こんな時間になっちゃった!」
「ありがとね、さよなら。」
風のように去って行った。
その後、僕がこの子とまた会うことはなかった。
ぼーのへそ
ぼーのへそ

ぼーにはへそがある。
あなたがぼーのへそに触れると、ぼーがやってくる。
深い森がある。
分け入っていくと、小さな池。
うっそうとした草いきれの中に、静かにたたずんでいる。
染み入るような静寂だ。
何かが池に飛び込んだ。
ぴちょ.....ん
鏡のような水面に波紋がひとつ。
あ ・・・ かえるだ。
ぼーがやってくる。
これ、芭蕉先生が詠んだ、ぼーのへそ。



